「相続財産の中に株式があるんだけど、どのように手続きをすればいいの?」
「株式なんて持ったことがないから保有し続けるのは不安だし、すぐ売却してもいいの?」
株式の相続に関して、このような不安はありませんか?
株式、いわゆる「株」を扱ったことがない人が、相続によって株を保有することがあります。
不慣れだからこそどのように相続手続きをすればよいのかわからず、不安に思う方は多くいらっしゃいます。
昔のように株券を実際に手元に持っているケースはほとんどなくなったため、数字や明細だけではどれほどの価値があるのかわかりにくく、銘柄や株数、またその評価のタイミングによっては金額も高額になることがあります。
この記事では、初めて株式を扱う方でも安心して手続きができるよう、株式の相続手続きに特化して解説していきます。
株式の相続手続きの全体像を把握し、少しでも不安を解消したうえでスムーズに手続きを進めていきましょう。
目次
1.株式の相続ではまず相続人の口座を準備することが必須
被相続人(亡くなった人)が株式を保有していたということは、つまり被相続人名義の株式があるということです。
その株式を相続によって引き継ぐ場合、そのまま保有するか売却するかに関わらず、まずは相続人の名義の口座を準備する必要があります。
(※口座を持っていなければ、新たに開設する必要があります)
そして、その準備した相続人名義の口座に被相続人名義の株式を移すこと(移管手続き)が、相続手続きということになります。
株式の相続手続きは、
- 株式を引継ぐ相続人の口座を準備する
- 必要書類等を揃えて証券会社に提出し、被相続人の口座から相続人の口座へ移管する
という2つのステップがあることを覚えておきましょう。
また、株式を引継ぐ相続人が複数いる場合、その相続人ごとに口座を準備(開設)する必要があります。
※株式を現金化(株式を売却)して相続人で分けたい場合は、相続人のうちから代表相続人を選び、その代表相続人が口座を開設して売却後にお金を分けることで、相続する全員が口座を開設することなく手続きすることも可能です。
2.株式の相続手続きの流れ(4つのステップ)
株式を保有したことがなければ、株式の相続手続きにも馴染みがないことがほとんどです。
そもそも、相続財産に株式があることに気づかないこともあり得ます。
被相続人が株式を保有していたことを知らずに相続手続を進めてしまい、後から株式の保有に気づいた場合は、遺産分割協議や相続税の申告など再度手続きをする必要が出てくるものもあります。
そうならないためにも、相続財産を調査するにあたり、株式の場合はどのように調査し、手続きして相続するのか、その全体の流れを解説していきます。
2-1.【STEP1】保有している株式を調べる
まずは、被相続人が相続財産として株式を保有していたかどうか調べる必要があります。
(※遺言書に株式の相続について明記されている場合は、その指示に従って株式の相続手続を進めていきましょう。)
ではどのように調べるかというと、上場株式と非上場株式で方法が異なります。
通常、上場株式を保有している可能性のほうが高いため、まずは上場株式があるかを確認し、保有していない場合は非上場株式や紙の株券を保有しているかを確認するとよいでしょう。
株式の種類 | 調べ方 |
上場株式 | ・証券口座開設の証明書 ・取引残高報告書 などが郵便で届いていれば、保有している可能性が高いです。 ※ネット証券であればメール等に取引履歴が残っている可能性があるため、被相続人の電子メールを確認してみましょう。 |
非上場株式 | ・事業の創業者 ・会社の経営者や役員 などが保有している可能性が高いです。 企業が独自に株式を保管している場合が多いため、被相続人が親密にしていた企業や、経営陣として携わっていた企業など思い当たる場合は、直接企業に問い合わせてみましょう。 |
紙の株券 | 2009年1月以前に発行された株券は紙でした。 (現在は、株券はすべて電子化されています。) そのため、紙の株券が自宅に保管されていることも考えられますので、思い当たる場所があれば探してみましょう。 ※紙の株券を見つけた場合は、単元未満株になっている可能性もあるので、管理している信託銀行各社に問い合わせて手続き方法を確認しましょう。 |
単元未満株、端株とは?
単元未満株とは、取引の最低数(※100株の場合が多い)に満たない株のことです。(例:50株や90株など)
端株とは、1株に満たない株のことです。(例:0.1株など)
上場株式であれば、証券保管振替機構(ほふり|※外部サイトに移動します)に開示請求をすることで、被相続人が株式を保有していないか調べることができます。
ただし、開示請求は有料であるため、株式を持っていたはずなのに見つからない場合の最終手段として活用するとよいでしょう。
※非上場の株式を調べることはできません。
2-2.【STEP2】証券会社等に残高証明書を発行してもらう
株式のある証券会社や信託会社が特定できると、次は残高証明書を発行してもらいましょう。
その株式数を参考にして、相続人間で誰がどの株式を取得するかを話し合います。
証券会社等の口座がわかると、残高証明書でその口座にあるすべての株式を確認することができます。
また、残高証明書を発行する際、基準とする日にちを指定することができます。
相続税の申告において評価額の計算で利用したい場合は、「被相続人が亡くなった日」を基準とした残高証明書を発行してもらいましょう。
2-3.【STEP3】遺産分割協議で分割方法を決める
相続人が複数いる場合は、遺言書がなければ「だれが、どの遺産を、どのくらい」相続するのかを話し合います。
(これを遺産分割協議といいます)
これは、相続財産に株式がある場合も同様です。
- 誰が(各相続人が)
- どの遺産を(どの株式を)
- どのくらい(何株か)
相続するかを話し合って決めます。
話し合って決めた内容は口約束ではなく、必ず遺産分割協議書を作成して全員が署名捺印するようにしましょう。
※当然ですが、遺産を相続する人が1人しかいない場合は、遺産分割協議書の作成は不要です。
※遺産分割協議書には全ての遺産について記載しよう
手続きによっては遺産分割協議書が必須の場合もあるため、「とりあえず今回は株だけで…」といった内容ではなく、しっかりした文言で、全ての遺産についての話し合いの結果をまとめておくことをお勧めします。
2-4.【STEP4】株式の移管手続きをする
遺産分割協議で誰が株式を取得するかが決まると、いよいよ株式の移管手続きを進めていきます。
改めて手続き先に連絡を入れるのですが、上場企業の場合と非上場企業の場合で連絡先や手続き方法が異なります。
上場株式の場合
残高証明書の発行だけではなく、移管についても証券会社等が手続きの窓口になりますので、遺産分割協議が終わって相続手続きを進めていきたい旨を伝えましょう。
必要書類や手続きの説明資料などを郵送してくれますので、それに従って書類を揃えて申請することで手続きできます。
非上場株式の場合
窓口は証券会社等ではありませんので、株券を発行している企業に相続手続きをしたい旨を直接伝えましょう。(※株式を発行した企業によって、名義変更の手続き方法が異なります。)
企業が指定する書式で書類の提出を求められることが多いため、連絡の際にどういった書類が必要になるか確認するようにしましょう。
ここからは、多くの人が実際に相続する割合の高い、上場株式の場合で説明していきます。
上場株式を相続するためには、相続人の名義の証券口座が必要です。
1章で口座の準備が必要であることはお伝えしましたが、証券口座を持っていない場合は、まずはじめに証券口座を開設する必要があります。
また、すでに証券口座を持っている場合でも、その口座が被相続人の証券会社と同じ会社の口座なのか確認しましょう。
証券会社によっては、同じ証券会社の口座でのみ移管手続きが可能(他の証券会社の口座では受付不可)な場合もあるためです。
証券会社に連絡する際に、同じ証券会社の口座しかダメなのか、他の証券株式の口座でもよいのか、口座の条件などについても確認しておくとよいでしょう。
株式の移管を行うための証券口座の開設ができると、証券会社から指定された必要書類を提出し、手続きを進めていきます。
(一般的な必要書類は次の3章で解説します。)
そして、証券会社から「完了通知」が届くと、移管手続きは完了です。
その後、株式を売却したい(現金化したい)場合は、売却のための手続きを相続した人それぞれが進めていく必要があります。
(これを「換価」と言います。)
現金化を希望する場合は、移管手続きの際にあわせて換価の方法も確認するようにしましょう。
3.株式の相続手続きに必要な書類
ここでは、株式を相続する際(移管手続き)に必要となる書類について解説します。
※紹介するのはあくまで一般的な書類です。
詳細は証券会社等により異なりますので、必ず事前に確認の上、必要書類を準備するようにしましょう。
必要書類 | 概要 | |
1 | 相続手続依頼書 | 証券会社から所定の書類をもらう |
2 | 被相続人の除籍謄本、改正原戸籍等 | 出生から死亡までの連続した戸籍 |
3 | 相続人全員の戸籍謄本 | 現在戸籍(本籍地を管轄する役所で取得) |
4 | 相続人全員の実印 | 相続手続依頼書に押印 |
5 | 相続人全員の印鑑証明書 | 実印の証明(住所地を管轄する役所で取得) |
6 | 相続人の株式口座番号 | 株式を引き継ぐ人の口座 |
7 | 遺産分割協議書 | 相続人全員の署名捺印があるもの |
8 | 遺言書(ある場合のみ) | 自筆証書遺言の場合は「検認済証」があるもの |
他の相続手続きの場合もそうですが、被相続人と相続人の戸籍は必須です。
時間に余裕をもって手続きを進めるようにしましょう。
4.株式の相続が不安な場合は専門家に頼ろう
株式の相続手続きは、ご自身で手続きすることも可能です。
ですが、普段株式に馴染みがない場合や、初めて相続手続きに携わるような場合、少しでも相続に関する不安を減らしたいときは、専門家のサポートを受けるのもひとつです。
特に、
- 複数の証券会社で株式を保有していた場合
- 非上場株式を保有していた場合
は、移管手続きや評価額の計算がいっそう複雑になるため、税理士などの専門家に頼ることをお勧めします。
お手続きでお困りの際は、ぜひご相談ください。
5.まとめ
この記事では、株式の相続手続き(移管手続き)について解説してきました。
株式も相続財産のひとつで、預貯金や不動産と同様に相続手続きを進めていく必要があります。
しかし、今までに株式を保有した経験がなかったり、紙の株券が出てきたり、株に関する知識がないと手続きの進め方がわからず、困ってしまう方も多いです。
株式の移管手続きのポイントは、
- 株式のまま相続する
- 株式を売却して現金にする
いずれの場合も、必ず相続人の名義の証券口座に一度移管する必要があるということです。
実際の手続きは、「どのような株式か」「どのように株式を遺産分割するのか」によって変わります。
この記事をもとに、株式の相続手続きの概要を把握していただき、手続きを進める参考にしていただけますと幸いです。
また、お困りの際はお気軽にご相談ください。
株式の相続手続きだけでなく、あらゆる相続手続きをサポート、代行いたします。
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